リーフの旅

2019年10月

『ガンピーさんのサイ』 ジョン・バーニンガム作 (BL出版)

 

 さようなら、ありがとう。

 

 バーニンガムさんの最後の絵本。大好きな温かいユーモアのある絵本がもう読めなくなるのかと思うとさみしいですが、最後の最後まで絵本を描き続けてこられたバーニンガムさんは、本当に人生を全うされたのだなあと感じます。

 おはなしはガンピーさんがアフリカでひとりぼっちのサイの子どもと出会って、連れて帰って一緒に暮らす、というほのぼのしたもの。チャーリーと名付けられたサイの子が、町の人々に受け入れられて働き出すところも平和な空気に満ちています。

 少しかすれたふるえる線も、明るい気持ちにしてくれる緑や黄の色彩も、バーニンガムさんらしいすてきな作品です。

 今までたくさんの宝物をありがとうございました。子どもの頃から、大人になってからもバーニンガムさんのファンでした。

『あなたがおとなになったとき』 湯本香樹実 文・はたこうしろう 絵

                             (講談社)

 心が透明になるとき

 

 『夏の庭』の作者、湯本さんの詩が歌の歌詞のようにすっと入ってきます。

 「あなたがおとなになったとき~」とくりかえすフレーズには、子どもたちの未来を想ってさまざまな願いが込められています。

 はたこうしろうさんの絵も詩にふさわしく透明感があってさわやかで、とてもよく合っています。

 忙しい毎日の中、目の前の日常のことで頭がいっぱい、なんだか明るい未来を想像することも難しいですが、せめて子どもたちの未来は希望のある、いっぱいにふくらんだ夢が持ち続けられるようなものであってほしいと、この絵本を見ていて願いました。

20CONTACTS 消えない星々との短い接触』 原田マハ (幻冬舎)

 

 マハさん、巨匠たちと会う

 

 画家(芸術家)を主人公とした数々の小説で私たちに時代や空間を超えて彼らの世界を見せてくださるマハさんですが、その創作の秘密がちょっぴり垣間見える1冊。

 セザンヌやルーシー・リー、黒澤明や手塚治虫など、日本と海外の芸術家20人にマハさんが手土産をもって「質問は2つまで」のインタビューを敢行する・・・という短編集。(もちろん時代も空間も超えて)

 マハさんはこうやって芸術家とコンタクトをとりながら作品にしていくのだな、と妙に納得してしまいました。憧れの巨匠と会うのにはりきったり緊張したり、無邪気なマハさんがかわいらしいですし、また巨匠たちの人となりが他の資料では伝わってこないような温かい手触りで感じられて嬉しくなります。

 この企画、実は京都の清水寺で開かれたマハさんプロデュースの展覧会、〈CONTACT つなぐ・むすぶ 日本と世界のアート〉展とのコラボレーションということで、なんと斬新で興味をそそられる展示なのだろうと思いました。

 展覧会を見に行くことはできませんでしたが、この本を読んだだけでも素敵な経験ができました。私も大好きな作家さんの展覧会に出かけたときには、作品を通して少しでもマハさんのように、作者と心の中でコンタクトをとれるようになりたいなと思います。

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