ブログネタ
【公式】オススメの本を募集! に参加中!

『木挽町のあだ討ち』 永井紗耶子 (新潮社)

 

他人の人生と出会うこと

 

 本の冒頭に掲げられた仇討の場面を描いた巷談帖の一節が、これから始まる物語へと誘う。仇討の裏舞台を知ったとき、心の奥が温かくなり、他人の人生と「出会う」ことの影響力を思い知らされた。

 一章ごとに語り手がかわり、仇討を成し遂げた菊之助について、またそれぞれの来し方について語る。登場するのは少年、菊之助が仇討まで身を寄せていた芝居小屋の木戸芸者(呼び込み)、立師(役者にふりをつける役目)、衣装係、大道具職人、筋書(脚本家)で、それぞれ波乱万丈の人生を経てここに集う者たちだ。ここで語られる各々の人生は、厳しい境遇であっても、心ある人と出会い、自ら選びとって今があるという、誇りと自信に裏付けされた魅力的な人生だ。

 若い菊之助は、父の仇討のために恩ある人物を殺めなければならない過酷な運命を背負い迷い苦しむが、彼らとともに過ごし、彼らの人生を知ることで大きく成長していく。

 人は出会ってきた他人によってつくられていて、人と人が出会うとき、各々の後ろにはたくさんの人々がいる、という話をきいたことがある。

 この物語を読み終わったとき、その話を思い出し、人と人とが輪のようにつながっているような気がした。