『逆ソクラテス』 伊坂幸太郎 (集英社)

 

 「僕はそうは思いません」

 

 作者の作品で子供が主人公の小説は珍しいなと思った。けれどよく考えてみると、大人になってからいちばん思い出すのは小学生の頃の自分だったり、小学生の頃の出来事が意外と今の自分にも影響を与えていると感じる。その頃に出会った大人もまたしかりだ。

 各短編のタイトルが「逆ソクラテス」「非オプティマス」「アンスポーツマンライク」など否定形なのが面白いし、内容も子供目線でありながら大人を疑ってかかる姿勢が貫かれていて一筋縄でいかない感じが小気味いい。こんなふうに大人を見ている子供たちが頼もしいし、しかっりしなきゃいけないなとも思う。

 「僕はそうは思いません」という意見の表明が決めつけの空気を打破すること、「人をいじめたり人に嫌がらせをしたりしない」のは将来の自分を守るため(どんな形でその人と再会するかわからないから)など、思わずうーんとうならされる処世術というか物事の真実がさらっと織り込まれている。決めつけや先入観の少ない大人でありたいなと考えさせられた。